ライトノベル マテリアルゴースト5 レビュー

マテリアルゴースト 5 (5) タイトル マテリアルゴースト5
著者 葵せきな
イラスト てぃんくる
出版 富士見ファンタジア
発売日 2007年5月


執筆者:jade 評価:
想像を超えた出来事が振りかかり、ユウ、鈴音、紗鳥らは呆然としながらも、日々を過ごしていた。
そんなある日、現守高校の上空に、巨大な「繭」が現れる。
「繭」の上には、金髪の美少年タナトスの姿があり、彼は全世界に向けてこう告げる。
「皆さん、自殺してください」
第17回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞作、ついに完結!

主人公にまったく魅力が感じられなかった1,2巻では凡百なラブコメに過ぎなかったのですが、3巻で主人公の死にたがりの原因が解き明かされてからは評価が一変。
次巻の発売日が待ち遠しいと思わせる数少ない作品の一つになったこの作品もいよいよ最終巻。
今回は13章+エピローグの構成となっています。

4巻が衝撃的なシーンで幕を閉じたため、否が応にも期待が高まっていたのですが、読み始めてから10ページですでに涙を堪えなければならず、それ以降も涙腺を刺激するシリアスな展開が続く期待を遥かに上回る展開に大満足。
紗鳥、鈴音、そしてユウ。
ヒロインたちが自分の本当の気持ちに気付き、悲しみを乗り越えようと足掻く姿を描いた序盤は、涙無しには語れません。
一時は名作誕生の気配すら感じていました。

しかしながら、暗いムードが一掃された8章以降、それまでのシリアスモードから、一転して小気味良いボケとツッコミの応酬が繰り広げられるラブ(?)コメモードへ。
それと同時に、それまで漂っていた名作の気配はたちどころに霧散してしまいました。
シリアスとコメディ。
この相反するジャンルを両立させてなお名作と思わせた作品は、『終わりのクロニクル』しか思い浮かばないくらいですからね。シリアスとコメディの両立の難しさを改めて感じました。

ただ、この雰囲気の転換が、一概に失敗だったと言えないのが、この作品の凄いところ。
何が凄いって、主人公とヒロインたちが繰り広げるボケとツッコミのレベルが異常なくらい高いんですよ!
電車の中で読んでいたため、必死になって笑いを噛み殺そうとしていたんですが、それでも笑みがこぼれてしまうほどの面白さでしたからね。
名作になれなかったことを嘆くのではなく、むしろ名作への道をあえて捨ててまで自分の作風を貫いた姿勢を褒めるべきなのかもしれません。

てか、萌え萌えな表紙の小説をニヤニヤ笑いながら読んでる25歳のサラリーマンって…
どこからどう見ても不審人物だよ…_| ̄|○

(閑話休題)

ただ、タナトスとの最終決戦は正直物足りなかったですね。
これまで絶対的な力を持つ悪役として描かれてきた割には、拍子抜けするほどあっさり決着しちゃうんだもんなぁ…
これでは読者に尻すぼみの印象を与えかねないですよ。
その点だけは間違いなく減点材料として数えられますね。

描かれることのない3年の月日、蛍が選んだ愛の形、そしてハッピーエンドともバッドエンドとも言いきれないラスト───
エピローグに関しては大きく評価が分かれそうな印象ですね。
個人的にはこういう妄想の余地を残した終わり方は大好きなのですが、人によってはまったく受け入れられないという意見も出てくるんじゃないかな。

評価はA+
好き嫌いで言ったら間違いなく“好き!”って即答できるんだけど、客観的な視点で評価しようとすると、ジャンルがどっちつかずのうえ、好き嫌いが非常に分かれそうな作品なので、評価がしづらいんですよね。
悩んだ末に、この評価に落ち着きました。

2巻までは凡百なラブコメ(1巻C+、2巻B)だったけど、3巻以降のシリアス路線はグッとくるし、主人公と女性陣のボケとツッコミの掛け合いがめちゃくちゃ面白いので、重すぎず軽すぎずのラノベらしい物語が好きな人には非常にオススメです。


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